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上原 友敬氏

受賞理由

 上原氏の研究は、κ-(BEDT-TTF)2X 系と総称される一連の有機磁性体の磁気秩序状態に関するものである。これらの物質群の磁性研究は主として測定のために印加磁場を必要とする磁化率や核磁気共鳴によって行われており、相境界近傍の物質ではしばしば相矛盾した結果が報告されている状況だった。これに対して上原氏は、Mott 転移近傍の絶縁相側に位置するκ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Cl と化学的圧力を制御するために BEDT-TTF分子の外側にある8個の水素をすべて重水素に置換した d8-κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Br に注目して μSR 法や磁化測定を通して詳細な研究を行った。いずれの物質も低温・ゼロ磁場において反強磁性転移に伴うミュオンスピン回転信号が測定され、ゼロ磁場におけるネール温度が磁場中の測定から報告されていた値よりも低いことや、反強磁性相の体積分率等を決定した。その結果、これら Mott 転移近傍の典型物質について相図上の位置を正確に求めることに成功した。これらの成果の上に、有機物質における Mott 転移の理解がより深化していくことが期待される。

引用元:日本中間子科学会誌「めそん」2017年秋号No.46 p22



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